南海旧型電車の系譜

 南海電車は1973年に1500Vに昇圧され、これを機会に半鋼製の旧型と言われる吊り掛け式電車は昇圧改造される事無く600ボルトのまま残された貴志川線を除いて、全て淘汰されてしまいました。これらの電車は「難解電車」と言われたほどに形態や遍歴が多岐に渡っています。ここではそれらを系統的に、なるべく判りやすく分類してみようと思っています。
◎附番基準
南海鉄道は明治40年に大阪近郊区間の難波・濱寺及び天王寺支線の電化が完成。この時に登場した電車は電1形と称し番号は1~附けられました。更に明治42年には和歌山市までの全線の電化が完成し、直通運転用の形式を電2形とし、101~の番号がつけられました。この様に形式と車体番号が異なる方式で、今日の日本では見かけなくなりましたが、戦前の東武鉄道もこれに似た方式を採用していました。このようにして新形式が誕生するごとに電3形、電4形‥と増備が続き、制御車も誕生すると電附1形‥と言う形式を定めました。車輌が増えるに従って車体番号の行き詰まりが生じ、大正末期に改番を実施しています。さらに昭和の初期になって電何々形という形式表示を監督官庁からモハとかクハなどと言うように改めるような通達があったので、例えば電7形201~をモハ201形という風に改められました。既に半鋼製の電車が登場していた時代で、南海本線に並行して阪和電鉄が昭和5年には全通し、これに対向して南海本線には昭和4年に電9形301~と言う特急・急行用の20m級大型車が誕生していますが、登場時はモハ301形、クハ911形となっていたようです。当時制御車は501~だったので、車輌の増備と共に形式が増加すると当然番号が行き詰る事は明らかな状態となったので根本的な附番基準の改定に伴う大改番が昭和11年に実施されました。これが戦後の旧型車の廃止に至るまで続けられた方式です。以下、この稿では昭和11年大改番による附番基準を基にお話しを進めていきます。

◎昭和11年制定の附番基準について。
その基本的な考え方は、
●電動車はモーター1個の馬力数を基準とし、モーターの無い車輌は800番台と900番台とする。
●モーターの無い車輌は800番台と900番台とする。
以上の2点が附番基準の骨子です。そこで電動車についてはモーター出力から以下の様な範囲で形式が定める事になりました。なお、形式名はその形式のトップナンバーを当てる事としています。
50馬力‥500~   56馬力‥560~  70馬力‥700~
 ウエスティングハウス100馬力‥1000~
 ジェネラルエレクトリック105馬力‥1040~
 以下は国産モーターで100馬力‥1200~  
 150馬力‥1500~
 200馬力‥2000~
以上のように定めましたが、当然の事ながら同じモーターを用いていても、車体構造や用途が異なる場合には、その数字の範囲内で別形式が与えられています。また1201~の車輌数が特に多く、1300番台にまで形式が及んでいます。この方式は初期の高性能車の一部まで及び、南海本線用の特急車のモハ11001形やズームカーの21001形などがその例で一万台は新車である事を表しています。

◎旧型吊り掛け式半鋼製車の分類
 いよいよ話しが本題に入ります。これらの中での最大勢力は「南海タイプ」と呼ばれる標準型車です。これ以外には「簡易鋼体車」と呼ばれる木造車の台枠や主要部品を流用した電車と、63形と呼ばれる終戦直後に導入した国鉄のモハ63形‥南海のモハ1501形とクハに格下げたクハ1951形が該当‥などがあります。ここでは主に標準型車について説明いたします。

◎標準形車の主な特徴
 標準型車は誕生時の経緯や用途により、車長が15m、18m、20mの3種類に別れ、例外的に17m車が数両存在しました。

●いずれもが扉を車体のやや中央寄りに設けた2扉車で、運転台扉と客扉の間の窓の個数は15m車では2個、18mと20m車では3個の窓が並んでいます。この窓配置が南海電車の最大の特徴とも言え、戦前の電車の中で運転台扉と客扉の間に窓が3個も並んでいる窓配置の電車は、南海本線に対抗して誕生した阪和電鉄のモヨ100形位のものと思われます。この様な窓配置にすると、「同一形態」の電車を連結すると客扉がほぼ均等の間隔で並ぶので、乗客の誘導に便利であると言う特徴があると言われていますが、実際には2扉と3扉の混合編成などが走り回って整列乗車どころの騒ぎでは無かったのであります。

●客扉の戸袋の横幅が他の窓よりやや広い事も南海の特徴で、このしきたり?は高性能車の6000系や7000系にまで及んでいます。

●標準型車は製造年度により、モデルチェンジを繰り返していますが、一部の例外はありますが窓配置の寸法はほぼ一貫して同一であります。またモデルチェンジをした際には車長にはかかわらず、すべて揃った同じデザインで製造されています。

アット・ニフティ アット・ニフティ会員に登録
ウェブサイトの利用について 個人情報保護ポリシー
©NIFTY Corporation